2011年6月13日月曜日

事例調査:エムシャーパーク

お久しぶりです、落合です。

最近は修士制作を考える際に知っておくべきだと思われる過去の事例を調査をしています。
今回はドイツのルール工業地域で実施されたIBAエムシャーパークプロジェクトについて書きます。



IBAエムシャーパークは第一次産業活動の為に、著しく環境破壊が進んだ地域に対して、総合的な観点で再開発し、新しい時代の人の生活にふさわしいように転換しようとした計画です。
対象となったのは約800㎢で、その中に16のも自治体を含んでいます。10年かけて自治体の合意形成を行いながら、緑の水のネットワークの再構築を目指しました。ここがIBAエムシャーパークプロジェクトが注目される理由の一つです。
ちなみにIBAとはドイツ語のIntemationale Bau-ausstellungの略で、日本では国際建築展覧会と訳されます。といっても固定的な展覧会開催機関があるわけではなく、建築や都市計画分野でその時の先端的なテーマを取り上げ、それを恒久的に展示するドイツのイノベーションの方式です。
IBAの基本戦略としては
「土地のリサイクル利用推進による都市的土地利用拡大の抑止」
「補修、改善、用途転換による建物や生産施設の耐用年数の向上/エコロジカルな建設理論による新築」
「エコロジカルな製品や製造法に向けた、地域的な生産構造の転換」
の3つで、それらをプロジェクトに埋め込んでいくために10年間期限付き有限会社(公社)を組織しました。この会社は約30人で構成されていますが、半分が広報関係という少し変わった形態をとっているのが特徴です。
ほかの特徴としてはこのプロジェクトでは3つの特色をもつ壮大な実験といわれています。
「広大な地域を、水と緑を骨格として扱い、汚染され破壊されたそれを、エコロジーを含めて再構築する。」
「ドイツ伝統のIBA方式によって、コンセプト・デザイン・技術の各方面について新しいアイデアを引き出す。」
「”修復的”とでもいうべき手法によって、現在あるものを部分的に残しながら、新しいものをはめ込むというやり方を多用する。」
ここから公社はプロジェクトの基本となる5つのテーマを設け、100以上の具体的なプロジェクトをマネージメントを行ないました。
5つのテーマとは
「生活を豊かにするウォーターフロント」
「歴史の証人(旧産業施設)の保存」
「公園の中のインダストリーパーク」
「新時代にふさわしいハウジング」
「社会的・文化的活動への支援」という内容でした。従って100余りのプロジェクトはこれらのどれかに対応しています。ではIBAエムシャーパークプロジェクトに参加する自治体や組織体のインセンティブは何なのか。それはIBA指定されると3つのメリットがあるからです。
「プロジェクト実施面でのプライオリティ」
「IBA公社のコンサルティングサービス」
「宣伝効果」です。
面白いのは公社の社員の半分が広報関係だからできる宣伝効果で、これによって事業が海外に広く発信されます。
このIBAエムシャーパークプロジェクトの具体的な大きな計画としては
「ツォルフェライン炭鉱業遺産群での計画」
「北部ランドシャフト公園計画」
「ドュイスブルグ内陸港での計画」が有名です。
「ツォルフェライン炭鉱業遺産群での計画」とは1930年の開設当時の世界最大かつ最新の採炭施設において、1986年の閉鎖に伴って全施設の改修、保全、再利用が計画・実施された。27haの敷地に20もの建造物群を保存利用され、IBA期間の終了までにビジターセンター、工房、オフィス、外構緑地、デザイン博物館などが完成し、2001年にはユネスコ世界遺産に登録された。IBA期間が終了した現在でも事業が継続されています。
「北部ランドシャフト公園計画」はIBAエムシャーパークにおける大規模産業用地の緑地公園整備プロジェクトの代表例で、7つの地域で実施された。操業を中止した製鉄所施設の機械設備・建屋をモニュメントとして保存しているほか、「産業博物館」「屋外劇場」「ロッククライミングや綱渡りなどの冒険公園」「通常の市民公園」等も整備され、周辺を200haに及ぶ広大自然保護地区が取り囲んでいます。
「ドュイスブルグ内陸港での計画」は1900年当時のドイツの穀物市場の発展を支えた世界最大規模の内陸港。第二次世界大戦後、重要性を失い取り壊しの危機に晒された倉庫等を活用し、住宅、商業、観光などの多機能サービス産業パークとして再生した。現代美術館、レストラン、バー、周遊船の発着場などの施設が設けられ、新たな内陸港としての賑わいを創出しています。

こうやって調査した結果、IBAエムシャーパークプロジェクトはイベントによる地域再生・歴史的建造物と記憶の保存・環境再生の代表的な事例だということがわかりました。
IBA期間が終わった現在においても多くの人に利用され、地域の観光資源にもなっています。現代になり、こういった産業遺産などを”古くなったお荷物”として捉えるのではなく、地域資源として”過去からの贈り物”として受け取り、今あるものをどう生かしてどういう状況を作り出すのかを考える時期にさしかかっていると思います。グリーンフィールドに手を付ける前にブラウンフィールドの可能性を考える。それが環境と人間の良い関係を作り出すきっかけになると思います。

この調査においてインターネット上の多くの文章を参照させていただきました。
主には
http://www.jcca.or.jp/achievement/riim_report/vol_04/iba-1.pdf
http://www.murc.jp/report/ufj_report/903/31.pdf
http://www.pacific.co.jp/thesis/item/social_policy_41.pdf
などです。

そして調査した内容はまだまだあるのですが、すべてを書くとかなりの長文となるので、さわりだけ書きました。
興味がある方はぜひ調べてみてください。

ではでは。


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