2011年6月16日木曜日

負の資産で街がよみがえるを読んで

こんにちは。落合です。
最近カラっと晴れる日が少ないですね。

三宅理一氏が2009年に学芸出版社から出版した「負の資産で街がよみがえる」という本を参考文献として読みました。
それのことを主観的ですが書きたいと思います。
三宅理一氏は地域資源を活用した新たなまちづくりや環境整備をテーマとして、日欧をまたいで活動している方です。
近年はアートプログラムを介した木造密集市街地の改善などに関わり、そのこと含めたプログラムによる地域戦略について書かれた本がこの本です。
東京の木造密集市街地の京島で実施された「アーティスト・イン・空き家」では法律による借地と借家の諸問題に対し、外国のアーティストをある期間受け入れるプログラムで解決しながら、地域活性を実現しました。



アーティスト・イン・空き家 作品 出典:10+1

横浜市鶴見区では外国人と日本人のコミュニケーションの渇望に対し、空き店舗に「鶴見スタジオ」というシンクタンクのスペースを作り、子供向けワークショップなどを仕掛け、コミュニティの形成に繋がりました。
ほかには廃校となった秋葉原の中学校の教室で試用的に「D-秋葉原テンポラリー」という仮設ミュージアムをオープンさせました。そこでは制作主体や会場設営などが毎回かわる建築やプロダクト製品の展示会をしたり、海外からのゲストとしてデザイナーを呼び、ワークショップを開催し、秋葉原の可能性を広げました。このデータや教訓から、千代田区の後押しによって秋葉原タウンマネジメント会社の設立のきっかけになり、新たなまちづくりの段階に入りました。

私は、これらの「空き家」「外国人の増加」「廃校」など負といわれている資産に対し的確な、または実験的にクリエイティブなプログラムを組み込んでいくことで、一時的ではなく持続的な地域再生とまちづくりの新たな方向性と場所の可能性を見いだしてきたのが三宅理一氏だと思います。
負として認識されていたものだからこそ、正の資産として逆転されたときに魅力が生まれる。負としての認識が大きければ大きい程、より魅力的な場所になるのではないでしょうか?
もちろんそれを転換させるプログラムは何でも良いわけではなく、場所性を読み取りそこにあったプログラムと思われるものを入れる。そこの何が魅力になり得て、どうやってそれを提示し、無理なくそこでまちづくりを継続させることが出来るのかを考えることが重要だと思います。

例えば去年開催されていた瀬戸内芸術祭は、島々ということでインフラ面が不便でしたが、それが島の生活という認識を来場者に持たせ、待ち時間を逆手にとって島の時間の流れを味わいつつ観光してもらうことに繋がっていたと思います。私も行きましたが、フェリーの待ち時間でだいぶ楽しませてもらいました。

瀬戸内芸術祭出典作品

小豆島の夕日

今まで一回も行ったことがない島々をゆっくり歩きまわることで、自分なりの島の魅力に気付き、記憶に残る。全員じゃないにしろ、また来たいと思ってくれた人がいたのならいつか思い出して足を運ぶんじゃないだろうか?少なくとも自分はまた行きたいと思っています。
そういう記憶に残ることが持続的な場所のつくりかたなのではないでしょうか?

跡地と記憶の関係はかなり強い。それを読み取り、ソフトでもハードでもいいからどうやって新たに記憶に残る場所がつくれるのか。
この本を読んでそういう視点での提案も忘れてはいけないなと考えました。

ではでは。

コミュニティデザインを読んで

どうも、落合です。近頃蒸れる季節になりましたね。
この前、山崎亮さんが書いた話題のコミュニティデザインを読みました。
ご本人には二回ほどお会いしたことがあるのですが、とても笑顔が素敵でパワフルで人当たりが凄く優しい方だったことを覚えています。そんな方が書いた本は読まないといけないと思ったのと同時に、すでに話題の一冊としてかなりの方々が勧めていたこと、ソフトの部分でのデザインに興味があったこと、研究に関係することが書かれていると思ってamazonで注文しました。
前回のIBAエムシャーパークプロジェクト調査で触れましたが、IBA公社のやっているようなマネージメントがちょっと気になっていました。
主観ですがマネージメントはハード・ソフトで分けると後者になります。その前提でこれから話を進めます。
そして、もしかしたらソフトの部分が上手く計画されていないとせっかくの場所性は失われるのではと考えるようになりました。
当たり前のことを言っているのかもしれませんが、以前まではハードのデザインによって自然にそこにアクティビティやコミュニティが生まれると考えていたのですが、デザインだけでは何度も来たくなる理由と、社会性と時代性への対応などに耐えられないのでは?と、最近読んだ本(三宅理一著、負の資産で街がよみがえる)やコミュニティデザインを読んで特に思い始めました。
例えば代々木公園が好きな人がいます。その好きな理由は都心にあれだけ広大な緑地があることや、一人になろうと思えばすぐなれることなどあると思いますが、趣味の集まりによる演奏や親子の遊ぶ風景、犬を散歩させる夫婦など人を介して見える部分があってこその代々木公園への好意が心理にあるのではないでしょうか?
多くの人の中で一人になれる場所があるのが公共だと槇文彦氏が言うように、社会において人間は必ず存在していて、それとともに場所も認識される。人が居て愛される場所、そういった場所を創造する際には必ずソフトの重要度はハードに比べても引けをとらないと思います。コミュニティデザインを読んで、山崎さんは”状況”に対して提案をやっている方でハードの持っている魅力を引き出すソフトの状況をつくりだしていると私は思いました。
ハードとソフト、この相互関係によるデザインこそが良い場所が生まれる条件なのではないでしょうか。
今まで自分がやってきたことはハードばかりでソフトの部分を軽視していた傾向があったので、修士制作においてはマネージメントの提案まで考えられたらな、むしろ考えなければ跡地の魅力を提示できないと思います。
なので、少し先の未来までの風景を考えたものにできるよう頑張りたいと思います。

ではでは。

2011年6月13日月曜日

事例調査:エムシャーパーク

お久しぶりです、落合です。

最近は修士制作を考える際に知っておくべきだと思われる過去の事例を調査をしています。
今回はドイツのルール工業地域で実施されたIBAエムシャーパークプロジェクトについて書きます。



IBAエムシャーパークは第一次産業活動の為に、著しく環境破壊が進んだ地域に対して、総合的な観点で再開発し、新しい時代の人の生活にふさわしいように転換しようとした計画です。
対象となったのは約800㎢で、その中に16のも自治体を含んでいます。10年かけて自治体の合意形成を行いながら、緑の水のネットワークの再構築を目指しました。ここがIBAエムシャーパークプロジェクトが注目される理由の一つです。
ちなみにIBAとはドイツ語のIntemationale Bau-ausstellungの略で、日本では国際建築展覧会と訳されます。といっても固定的な展覧会開催機関があるわけではなく、建築や都市計画分野でその時の先端的なテーマを取り上げ、それを恒久的に展示するドイツのイノベーションの方式です。
IBAの基本戦略としては
「土地のリサイクル利用推進による都市的土地利用拡大の抑止」
「補修、改善、用途転換による建物や生産施設の耐用年数の向上/エコロジカルな建設理論による新築」
「エコロジカルな製品や製造法に向けた、地域的な生産構造の転換」
の3つで、それらをプロジェクトに埋め込んでいくために10年間期限付き有限会社(公社)を組織しました。この会社は約30人で構成されていますが、半分が広報関係という少し変わった形態をとっているのが特徴です。
ほかの特徴としてはこのプロジェクトでは3つの特色をもつ壮大な実験といわれています。
「広大な地域を、水と緑を骨格として扱い、汚染され破壊されたそれを、エコロジーを含めて再構築する。」
「ドイツ伝統のIBA方式によって、コンセプト・デザイン・技術の各方面について新しいアイデアを引き出す。」
「”修復的”とでもいうべき手法によって、現在あるものを部分的に残しながら、新しいものをはめ込むというやり方を多用する。」
ここから公社はプロジェクトの基本となる5つのテーマを設け、100以上の具体的なプロジェクトをマネージメントを行ないました。
5つのテーマとは
「生活を豊かにするウォーターフロント」
「歴史の証人(旧産業施設)の保存」
「公園の中のインダストリーパーク」
「新時代にふさわしいハウジング」
「社会的・文化的活動への支援」という内容でした。従って100余りのプロジェクトはこれらのどれかに対応しています。ではIBAエムシャーパークプロジェクトに参加する自治体や組織体のインセンティブは何なのか。それはIBA指定されると3つのメリットがあるからです。
「プロジェクト実施面でのプライオリティ」
「IBA公社のコンサルティングサービス」
「宣伝効果」です。
面白いのは公社の社員の半分が広報関係だからできる宣伝効果で、これによって事業が海外に広く発信されます。
このIBAエムシャーパークプロジェクトの具体的な大きな計画としては
「ツォルフェライン炭鉱業遺産群での計画」
「北部ランドシャフト公園計画」
「ドュイスブルグ内陸港での計画」が有名です。
「ツォルフェライン炭鉱業遺産群での計画」とは1930年の開設当時の世界最大かつ最新の採炭施設において、1986年の閉鎖に伴って全施設の改修、保全、再利用が計画・実施された。27haの敷地に20もの建造物群を保存利用され、IBA期間の終了までにビジターセンター、工房、オフィス、外構緑地、デザイン博物館などが完成し、2001年にはユネスコ世界遺産に登録された。IBA期間が終了した現在でも事業が継続されています。
「北部ランドシャフト公園計画」はIBAエムシャーパークにおける大規模産業用地の緑地公園整備プロジェクトの代表例で、7つの地域で実施された。操業を中止した製鉄所施設の機械設備・建屋をモニュメントとして保存しているほか、「産業博物館」「屋外劇場」「ロッククライミングや綱渡りなどの冒険公園」「通常の市民公園」等も整備され、周辺を200haに及ぶ広大自然保護地区が取り囲んでいます。
「ドュイスブルグ内陸港での計画」は1900年当時のドイツの穀物市場の発展を支えた世界最大規模の内陸港。第二次世界大戦後、重要性を失い取り壊しの危機に晒された倉庫等を活用し、住宅、商業、観光などの多機能サービス産業パークとして再生した。現代美術館、レストラン、バー、周遊船の発着場などの施設が設けられ、新たな内陸港としての賑わいを創出しています。

こうやって調査した結果、IBAエムシャーパークプロジェクトはイベントによる地域再生・歴史的建造物と記憶の保存・環境再生の代表的な事例だということがわかりました。
IBA期間が終わった現在においても多くの人に利用され、地域の観光資源にもなっています。現代になり、こういった産業遺産などを”古くなったお荷物”として捉えるのではなく、地域資源として”過去からの贈り物”として受け取り、今あるものをどう生かしてどういう状況を作り出すのかを考える時期にさしかかっていると思います。グリーンフィールドに手を付ける前にブラウンフィールドの可能性を考える。それが環境と人間の良い関係を作り出すきっかけになると思います。

この調査においてインターネット上の多くの文章を参照させていただきました。
主には
http://www.jcca.or.jp/achievement/riim_report/vol_04/iba-1.pdf
http://www.murc.jp/report/ufj_report/903/31.pdf
http://www.pacific.co.jp/thesis/item/social_policy_41.pdf
などです。

そして調査した内容はまだまだあるのですが、すべてを書くとかなりの長文となるので、さわりだけ書きました。
興味がある方はぜひ調べてみてください。

ではでは。


2011年6月6日月曜日

敷地の選択

中国のガソリンスタンド

新宿コマ劇場(閉館前)


早いもので6/6になりましたね。
中間発表が7月中旬なのでちょっとあせってきました。

今日は敷地のことについて書きます。

今のところ敷地候補がいくつかあります。
一つ目は某工場です。
ここは閉鎖が決まっており、跡地になること決定です。
けれど、まだその工場が何をやっていてどんなものを作っているかなどの情報は
事情によりまだ発表できません。書けるようになったらその時に書こうと思います。

二つ目といっても業種的に数カ所になると思いますが、ガソリンスタンドです。(画像は中国ですが、日本で考えてます)
これが結構捉え方によってはおもしろい。
様々なところに点在し、ほとんどが車通りが多い道路に面しているし、
地下にガソリンを入れておくタンクと天井には高いキャノピーが必ずあることなど、
利用出来そうな要素がたくさんあります。
しかしどこにでもあるため、一カ所ごとの場所性があまりありません。
そこが難しいところでありながらおもしろいところでもあるのですが・・・。

三つ目はどこかの産業遺産を敷地にしてみたいと思っています。
現在の日本に産業遺産として認定されている場所は結構あります。
その中から一カ所を探し出してやってみたいと考えているのですが、
未だ見つかっていません。
もう少し探して良さそうな場所が見つかったら書きます。

四つ目は新宿コマ劇場跡地です。
すでにそこでは新しい工事が始まっていますが、更地と仮定した場合を考えています。
更地になったうえでここを「舞台」とし、歌舞伎町のホストや客引きが役者になってここの場所の日常風景を見せてくれるシアター的空間を考えています。

これらのように一つ一つタイプや場所性が違う敷地に対して同時に提案することで、
自分なりの設計手法の抽出を計っています。
この詳しい話はまた今度書こうと思います。

とりあえず今はこんな状況です。
何か他に良さそうな敷地あったら教えて下さい。

ではでは。